安定期について

 長期休暇の時期になると妊婦健診時に「もう安定期なので遠出してよいですか?」というご質問をよくいただきます。年末年始を利用して帰省や旅行を考えている妊婦さんもおられることでしょう。今月は安定期についてお話しします。

  「安定期についてお話しします。」と書きましたが、妊娠中に安定期はありません。一般的に妊娠16週頃が安定期と言われているようですが医学的には分娩が無事終了するまで安定期は存在しないのです。なぜなら妊娠中はどの時期にも腹痛、出血、感染などが突然おきるからです。また妊娠すると女性ホルモンは次第に増加し、特にエストリオールというホルモンは非妊娠時の1000倍にもなります。晩婚化が進んでいる現代は妊婦さんの年齢も高齢化していますのでこのような体の変化への適応が困難になります。高齢の妊婦さんは妊娠高血圧なども発症しやすくなり、より母体と赤ちゃんの危険度が高くなります。妊娠中はどの時期も大事に過ごさなければなりません。妊娠中は自分が帰省するのではなく、ご家族にいらしていただくなど工夫して分娩まで丁寧な毎日を過ごしましょう。

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# by chikakinu | 2018-12-01 05:00  

妊娠とインフルエンザ予防

 紅葉の季節はインフルエンザの予防接種の時期です。今月は妊娠とインフルエンザ予防についてお話します。

 インフルエンザは冬に流行する感染症です。主な症状は38度以上の高熱、関節痛、頭痛、筋肉痛などです。妊婦はインフルエンザ感染が重症化し易く、妊婦の高熱は時に児の心血管系の先天奇形の原因となるという研究報告もあります。妊婦はインフルエンザに罹患しないようにすることが大切です。インフルエンザに罹患しないために最も効果的なことはインフルエンザワクチンを接種することです。現在使用されているインフルエンザワクチンは不活化ワクチンであるため全妊娠周期を通じて妊婦、胎児双方に理論的に問題は無いと言われています。インフルエンザワクチンには防腐剤としてエチル水銀を含む製剤とエチル水銀を含有していないものがあります。エチル水銀の濃度は極少量であり胎児への影響は無いとされていますが、緊急時(インフルエンザが猛威を振るっていて一刻も早い接種が必要など)以外はエチル水銀の含まれていないインフルエンザワクチンを接種したほうが望ましいと考えます。当院ではエチル水銀の入っていない製剤を使用しています。インフルエンザワクチンの接種後効果がでるまでには2〜3週間かかります。11月中に妊婦さんと妊婦さんの夫、お子さん、お里帰り先のご家族皆さんでインフルエンザワクチンの接種を受けてください。

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# by chikakinu | 2018-11-01 05:00  

風疹の予防接種について

 風疹の流行が心配されています。今月は風疹の予防接種についてお話しします。

 老婦人探偵のミス•マープルが活躍するアガサ•クリスティーの「鏡は横にひび割れて」に次のような文章があります。
「しかも、その点がこの事件の真の解答だったわけなの。なぜかというとね、風疹は非常に伝染しやすい病気だからなの。誰でもすぐにうつされてしまうものだわ。それからね、もう一つ憶えておかなきゃいけないことがあるのよ。それはね、女の人がその」〜彼女は次の言葉を口にするのにちょっとヴィクトリア朝時代風な慎み深さを見せた〜「妊娠四ヶ月以内に、この病気にかかった場合には、非常におそろしい悪影響をうけるおそれがあるということなの。」(橋本福夫訳 角川書房)
本書はアガサ•クリスティーが72歳の時の作品とのことですから1962年、昭和37年にイギリスでは医師ではない老婦人もこのように正しい風疹の知識を持っていたのには驚きます。
 妊娠初期の女性が風疹に感染すると。赤ちゃんにも感染して赤ちゃんに影響が出る事があります。主な症状は耳が聞こえにくい、目がみえにくい、心臓に病気がある、発達が遅いなどで、これを先天性症風疹症候群といいます。妊娠中に風疹にかかることがないよう妊娠前に風疹の抗体があるかどうか確かめておきましょう。血液検査で抗体の有無がわかります。かかりつけ医で検査を受け抗体が無い場合は予防接種を受けましょう。風疹の予防接種後2ヶ月は避妊が必要です。また妊娠中は風疹の予防接種を受けることができません。もし妊娠中に妊婦さんに風疹抗体が無い事がわかった場合は妊婦さんを守るために妊婦さんの夫、お子さん、同居のご家族そして里帰り先のご家族も風疹抗体が十分にあると確認された方以外は早急に予防接種を受けてください。

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# by chikakinu | 2018-09-01 00:00  

月経困難症を考える

 殊の外暑い夏です。月経痛がひどい女性は暑さと痛みで大変過ごしにくいことと思います。今月は月経困難症についてお話します。

 月経困難症は月経時に強い下腹部痛、腰痛があり学校生活や就労などの社会生活に支障をきたすものを言います。約80%の女性に月経時に何らかの症状が見られます、その中で社会生活が困難な場合のみを月経困難症と言います。月経困難症には子宮内膜症や子宮筋腫などの病気が原因となっている器質性月経困難症と、何も原因の無い機能性月経困難症があります。多くの場合、特に10 代から20代はじめの分娩経験の無い女性の月経困難症のほとんどは機能性月経困難症です。 治療は鎮痛剤の内服が第一選択です。月経困難症の患者さんに鎮痛剤の内服の有無を尋ねると「なるべく鎮痛剤は内服しないでがまんしている。」と答える患者さんが多く見受けられます。鎮痛剤はなるべく早いうちに適正かつ十分な量を内服することが大切です。それでも痛みのコントロールが難しい時にはピルを内服する方法があります。月経困難症の女性は将来的に子宮内膜症を発症するリスクが高いのでピルの内服を早めに開始することも大事なことです。 月経が12歳に開始し、毎月5日間痛みがあり、51歳に閉経するとして5日×12ヶ月×40年=2400日≑約6.7年人生の7年近くも痛みに耐えなければなりません。月経困難症の対処について正しい知識を持ち豊かな人生を送りましょう。

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# by chikakinu | 2018-08-01 05:00